ただ側にいることの本当の意味







アッシュフォード学園の庭園から見る空は綺麗だなとライは思った。


暫く何もすることなくただ眺めているとその人物はやってきた。


「お前の呼びだしはいつも突然だな」


その人物ことルルーシュ・ランペルージュはライのもとへゆっくりとライの元へ歩
みよった。





「最近学校来ないから、心配してたんだよ?」

「ああ、だがお前も最近学校を休んでいただろう?」

「う・・・まあそうだけどって何でルルーシュが知ってるの?」

リヴァルの話だと、僕が休んでいるときはたいていルルーシュも休んでるらしい。
「そうだな、俺はお前のことなら何でも知っている。」

「ルルーシュが言うと何だかホントなんでも知ってそうな気がするよ」

そしてライとルルーシュは顔をあわせ静かに笑った。



そしてライは胸にある暖かさを感じる。


これが幸せというものなんだろう。


他の生徒会メンバーの時とは少し違う胸の暖かさ。


きっとこれが人を好きになるという事なんだろう。




昔これに近い感情を持っていたことがあった。

妹と母を守る為になら何だってやってやろうと思っていた。




ルルーシュに対する気持ちはこれに似ていて少し違う感じがする。

今度こそ、守りたい。


その後暫く他愛も無い話をした。


これが最後の会話になることを知っていながら、ライはいたって普通の会話をした。

別に『せめて最後は笑って別れたい』という訳ではない。 


最後だから、こんな会話なのだ。


自分の口から別れの言葉を言う事がライには出来なかった。

どういう風な言葉を使えば、寂しい気持ちが無くなるのか分からなかった。

涙を流さないで、自分は後悔していないと言い切ることが出来なかった。


だから、なにも言わない。




「・・・そろそろ暗くなってきたな。」

夕日が沈みはじめている。


「そうだね・・・」

(この夕日と共に僕はここを去らなければならない。)
寂しそうにライはその夕日を見つめた。

「・・・ライ、今日はどこか変だぞ?」

「っ・・・」

ルルーシュに気づかれてるなんて思いもしなかった。

せめて最後だからいつもどおりの『ライ』を演じきったつもりだった。




ライは苦笑を浮かべた。

「やっぱりルルーシュは何でも分かるんだね・・・」

そういうとルルーシュはライをじっと心配そうな顔で見上げる。


「俺に・・・、俺に出来ることがあるなら何でも言え。
 お前の為なら俺は・・・」

「ありがとうルルーシュ。でもこれは僕一人でやんなきゃいけないことなんだ。」
ルルーシュは寂しそうな顔をし、顔を下げた。

「やっぱり・・・お願いがあるんだけど、一つだけいい?」

ライはか細い声を絞り出してゆっくり言った。

ルルーシュは少し安心した顔を浮かべ、ライを見つめた。

「なんだ?」

その声はとても優しいものだった。


全てを話して助けを求めたい自分がいる。


だがそれでは、ライの一番大切なものは守れない。



何とかその気持ちを心の奥底に押し込めた。


「・・・頑張れって言って」

「なっ・・・」

ルルーシュは驚いて目を見開いていたが、暫くしてまたあの優しい声で囁いた。

「頑張れ。何のことかよく分からないが、お前なら大丈夫だろう。」

ちょっと照れくさそうに言うルルーシュをライは静かに見ていた。



もしこのときルルーシュがライに自分がゼロだということを話していたら、ライは
V.V.の元へ行かなかったかも知れない。


もしこのときライがルルーシュに全てを話していたなら、ルルーシュはこんな言葉
をかけず、ライがなんと言おうと全力でライを引き留めていたかもしれない。


だが二人は相手のことを大事に思いすぎていた。



ルルーシュにはライに自分がゼロだといえば拒絶されるかもしれないという恐怖が
あった。


ライにはルルーシュに全てを話したら力を持たない学園をブリタニアが力でねじ伏
せ皆を不幸にするかも知れないという恐怖があった。


だが、もし二人共お互い本当のことを話していたなら、ライは拒絶しないだろうし、
ルルーシュは力を持っているから、そうなることは無かっただろう。


だが二人は相手のことを大切に思いすぎていていた。



その結果、二人は一番大事なものを失うことになる。







「じゃあ戻るか」

「僕は寄って行くところがあるから・・・」

「わかった、ではまた」


「ああ、・・・さようなら・・・」



そして二人は別々の方向へ進んでいった。




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