さよならは、 別れの言葉じゃなくて







生徒会室の扉を開けたミレイは驚いた。


とっくに生徒たちは下校していて、誰も校舎に残っていないと持ったらが、そこに
は見慣れた人物がいたからだ。



「ライ?こんな時間までずっと仕事をしていたの?」

「ミレイさん・・・」


何故かその日のライはいつもと違う雰囲気を出していた。



どこか表情は寂しげで、儚い何かを感じた。



ミレイは手に持っていた生徒会の資料を落とした。

「あっもう、なにやってるんですかー」

ライは席を立ち、散らばったプリントを拾おうとしゃがんだ。



そして頭を包むようにミレイはライを上から抱きしめた。

「−ミレイさん?」

心配そうなライの声が生徒会室に響いた。

沈黙の時が流れる。。



そしてゆっくりミレイは手を離し、ライを見つめる。


静にゆっくりと言う。

「どこかへいっちゃうの?」

それは優しい呟きだった。


吃驚してライはミレイを見返した。

「・・・やっぱりそうなのね」


ミレイはそして目線を落とした。


自分が落としてしまって散らばったプリントが目に入る。







ライは何も答えない。


いや、正しくは答えることが出来ない。




内心、焦りと驚きと不安がぐるぐる渦を巻いている。


そんなライの心情を察したのか、ミレイは静かに微笑む。

「やーねぇ、ただの勘よ、勘。」


そしてその表情を僅かに曇らせる。


「こういう事だけは良くあたるのよねぇ・・・」


そこでようやくライは口を開いた。


「どうしてそう思ったんですか?」

それは小さな囁きで合ったが、ミレイは一字一句聞き漏らすことがなかった。


「んーそうねぇー、『保護者の勘』かしら?」

「なんですか、それ」

そういってライは少しはにかんだ。

それにつられて、ミレイもはにかむ。



また静かな時が流れた。






暫くしてミレイは下を向いてか細い声で言った。

「あなたが其処に行きたいと思って、自分で決めたの?」


「・・・はい」

僕は嘘をついた。


「じゃあ、・・・仕方がないわね」

「すいません・・・」

「貴方が謝る事じゃないわ。ただし、条件があります。」

「・・・?」


「其処に行ったら必ず、連絡すること。」

「・・・はい。」

また嘘をついた。


「そこで必ず幸せになること。」

「・・・はい。」


「そしていつかここに帰ってくること。」

ライははっとして顔をあげる。


この人は気づいてる。

ライが其処から戻ってくる気が無いのも見抜いている。


それでもミレイはライに約束をさせる。

守れることが出来ないと分かっていても。




だからライは嘘をつく。


「はい、約束します。必ず戻ってきます。」



生徒会室を出ようと扉に手をついたとき、ライには迷いがあった。


全部話してしまうという方法もある。

別にそれ以外だって方法はある。

ライは黒の騎士団の作戦補佐だ。

ゼロに相談すればいい話かもしれない。

そうすればライはここを去らなくてもいいかもしれない。

だけどそうすれば







扉を開いてゆっくりライは振り返る。
「ミレイさん」

「ん、なにかな?」

無理に明るい声をだして、声が震えている。


「今までありがとうございました。」

「・・・いってらっしゃい。」

その言葉を聞いてライは泣きそうになった。

「・・・いってきます。」




ミレイは泣きそうな顔をしていたが、最後のライの言葉をきいて少しだけ微笑んだ。



「・・・」



そしてライは扉を閉めた。



(良かった、この時間帯で。)


こんな情けない顔を見られずにすむ。









そんなときにある一人の人物が浮かんだ。

いやこんな時だからこそ、だ。






ゼロからもらった携帯電話を取り出す。

(これも今日までか・・・)



何回かのコール音の後その人物は電話に出る。


『なんだ、ライ』

「C.C.・・・君に言っておきたいことがあるんだ。」

そして全てを話した。


『そうか・・・つまりあの男は生きている訳だ・・・』

「多分、いやおそらくそうだろう」

『そうか・・・てっきり殺したと思っていたんだがな』

そうC.C.は何食わぬ声で冷静に言った。


「C.C.、ゼロと黒の騎士団を頼む。」

『お前はどうするつもりだ?』

「V.V.と一緒に神根島に行って」

『そしてまた逃げるのか』

C.C.は苛立った口調になった。

珍しく彼女が怒っている。
『お前はゼロの・・・あいつの側にいて、あいつを守るんじゃなかったのか?』

「そうだよC.C.、だから僕は行くんだ。」

『お前・・・』

「僕がいたらみんなに迷惑をかけることになる。」

『・・・私が側にいてくれといってもか?』

「・・・ああ。」

そうはっきり行ったらC.C.はいつも通りのいつもの口調に戻った。

『不死身の魔女が言っても聞かないか』

「僕は世界にとって今ここにいるべき存在じゃないんだよ
 だから・・・さような」

『まて。』

「・・・?」

『私は不死身だ。お前がまた起きた時にまたあえる。』

「・・・それで?」

『また逢おう。それが何時になろうと、私には共犯者が必要だからな』

その口調はどこか偉そうだったが彼女なりの気持ちが伝わった。

なぜかそんなC.C.が可笑しく感じてしまい、ついクスっとわらってしまった。

「・・・分かったよ。また逢おう、僕の共犯者。」


そして電源ボタンを押した。




黒の騎士団の司令室でソファーに座っていたC.C.はゆっくり携帯を机に置いた。
そしてチーズ君を抱きしめた。

「・・・なんだマリアンヌ。・・・私が?」

そして優しく微笑んだ。


「そんなわけ無いだろう?ただの共犯者だ。そんな感情を抱くはずが無いさ。」








電源を切った後暫く携帯電話を見つめたが、ライは意を決した。

そして携帯電話を逆方向に畳む様に、それを折った。

それはいとも簡単に出来た。




さあこれで準備は整った。

最後に彼に逢いに行こう。



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