神聖ブリタニア帝国第3皇子、元エリア11総督






24という若さで、「総督は看板役者」という考えをもっていた『元』エリア11総督。



国民に向けて派手なパフォーマンスを行っていたが、実戦での作戦立案や戦局分析

などの、軍事的な指揮能力は低いが、考古学や芸術の分野においては優れた人間で
あり、公共事業として美術館や遊園地などの建設に力を入れていた。




だが黒の騎士団による奇襲によりゼロに殺された最初の皇族。


まあ実際はシンジュクゲットーにおける戦闘で、目撃者を消すべくゲットーの民間
人を虐殺する命令を下すが、ゼロらの反撃に遭遇し戦力の大半を喪失し、最後はゼ
ロが手をかけたらしい。




といってもその人物が死んだときのことをライはよく知らない。


そのときは丁度実験室でC.C.が輸送中だったため、ライは大きな実験をさせられて
いたため外部とは連絡が取れなかった。




そのため彼が死んだことを知ったのはアッシュフォード学園に来てからだった。






彼はよくこの実験室に来て、僕の様子を見に来た。

そしていつも言うのだ。


「やあ、ご機嫌はどうだい?、僕のお人形さん。」



最初はその言葉にいちいち苛立っていたが、暫くするうちに彼という人間が良く見
えてきた。



(ああ、良くも悪くも彼はこういう人間なのだ。)


くるたびにニコニコ微笑かけ、その日あったことをただべらべら話す。



後ろでバトレーが心配そうに見ているが、そんな視線なんて気にしていない。





彼の話は主に皇族の暮らしぶりや、エリア11について自分が作った図書館や美術
館の話ばかりだった。


だが実験しかやることが無いライはただ静かに黙って彼の話を聴くしかないのだ。




感情は少しはあった。









だけどその感情も忙しい黒の騎士団の生活で消え去ってしまった。





でも確かにはっきりと『クロヴィス・ラ・ブリタニア』は死んだことは残った。









そして今現在、その人物はベットの上で横たわるライをまるで愛しいものを見るかの眼で
(まあ実際にそうなのだが)椅子に逆に跨り背もたれに肘を掛けていた。


「ねえ、何か僕に言いたいことは無いのかい?」




(聞きたいことはある、だが・・・)


目の前でニコニコ笑っているクロヴィスを見ると本人かどうかさえ分からない。



声も雰囲気も自分の知っている彼と全く同じだ。

だがまだ彼が本物という保障は無い。

暫くライが黙って観察しいると、不意に呼びかけられた。

「ねえ、僕のお人形さん?」

懐かしい呼び声に思わず目を見開く。



彼と始めてあった日。

無理やり目覚めさせられて初めて会った人間。


彼は自分に笑いかけてそう言った。


『はじめまして、僕のお人形さん。』





「・・・本当に、生きてるの・・・?」


ライが言葉を紡ぎ出すと、クロヴィスはニコっと笑って答える。

「当たり前だろう?
 僕は生きてるよ、現にほらっ」

そういってクロヴィスはライに手を伸ばし手首をつかんだ。

ライは一瞬びくっとしたが、なされるがままに動けないでいた。

そしてクロヴィスはそっとその手を自分の左胸に持ってくる。


暖かい鼓動が手を通して伝わってくる。

「ね?生きてるだろう?」

だがライは何も反応出来ずにいた。



(クロヴィスは確かに殺されたんだ、彼は死んだ、ゼロに、ルルーシュに、だから)

呆然としてただクロヴィスを見ることしか出来ないライに、クロヴィスはまた微笑み
、ライを掴んだままの手を上に力強く引っ張り、ライを体ごと引き寄せた。

そしてそのまま自分の胸にライを抱きしめた。


「どうしちゃったんだい?
 暫く外に出ちゃったから頭が上手く回らないのかい?


 でも大丈夫だよ。

 これからはずっと僕が一緒だからね。」


その言葉を最後まで聞く前にライは意識を失った。











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