皇帝との面会



































ライがすることも無くベットにごろごろ転がっていると、10人ほどの研究員の男たち
がはいってきた。


その日はいつもと違った。

いつもならばここには必要最低限の人間しか来なく、1日に2回ほど二人の研究員が
当番制できたいた。



そしてベットを取り囲むようにずらっと並ぶ。


「何のようだ?」

ライが研究員達を睨み付ける。

その睨みは周りを凍りつかせるかのように冷たい。


研究員達はうっと息をつめらせ、ライから一歩離れる。


そんな中一人の男が人の間からゆったりとした歩調で歩いてくる。

「ずいぶん機嫌が悪いようだね」


「・・・クロヴィス・・・殿下・。」


ライは先ほどより厳しい目つきでその人物を睨み付ける。



だが睨まれてる当人はなんとも思わないらしく、皇族らしい優雅な笑みを浮かべている。

その顔が嫌でライはクロヴィスから眼を背けた。


「『殿下』なんて呼び方、君の地位からじゃおかしいだろ?


 それより君に合わせたい人物がいるんだ。」


そういってクロヴィスは無理やりライ顎を持ち上げる。

抵抗しようとしてクロヴィスを見上げた時、ライは首にちくっとした痛みを感じた。

前を見ると、注射器を持ったクロヴィスの顔がぼやけて見える。




































(ここは、何処だ?)



ライが目覚めたとき、其処は見覚えの無い部屋だった。

薄暗い室内。
ぼーっとする頭を無理やり動かして視覚を平常へと戻す。


(ここはっ!)

ライが冷静な判断で其処が何処だが特定した。

ここにきたことは無いが、ここがどんな場所なのかよく分かった。

赤い絨毯を敷き詰め、段差の先にある大きな椅子。

その椅子には威厳と豪華と力強さを感じる。



分からない筈が無い。


今も昔も其処は変わらない。




椅子の後ろから光が逆光となりその椅子に座る人物の顔がぼやけて見える。





姿をはっきりと認識出来ないが、その人物がただ者でないことはよく分かった。



そして不意にその人物は立ち上がった。

体がびくっと震えたがライはその場を動かなかった。

いや、動けなかった。






「誰・・・ですか?」




その声にはほんの少し恐怖が混じっていた。

ライが動けないでいる理由は一つ。



その男が怖いのだ。

正しくはその『雰囲気』が怖いのだ。




「・・・我が偉大なる祖先、『狂王』よ。」



ゆっくり、ゆっくり進んでくる歩きはまっすぐにライの元へと向かっている。


それにあわせる様に自分の息が荒くなるのを感じた。



(違う・・・この人はあの人じゃない!)



分かっているはずなのに、体の震えは止まらない。

ただ似ているだけなはずなのに、声も全く別人なのに。


頭をよぎる男の顔。

それは父親だった。

自分と妹と母を見捨てた男。













「・・っぅ・・・ぁ・・・・」

目の前までその男は来て、冷たい瞳でライを見下ろす。


「嘗て狂王と呼ばれた人物がまさかこのような姿とは思いませんでした。」

男は腰を下ろしてライの顔を見つめた。


一年で隣国全てを領土に変えた男。

戦いの天才で、どんな状況でも順応していき確実に勝利を挙げた。

自身も戦いの最前線に立ち、10人がかりだろうと一人で斬殺した。

その所為で戦いではその銀の髪も白い頬も真っ赤な返り血を浴びていた。


そして最後は国民まで戦いに出させ、その戦いで行方不明となった。


色々な書物を読んだが、年齢のことが書かれていなかったため、ほとんどの人間はライ
を巨漢の二十台後半の男だと思われてきた。


だが目の前にいる青年は腕も細く精巧な顔からは戦いとは無縁の人物にも見える。



「貴殿は今まで黒の騎士団として戦っていた。

 そしてわが息子、ルルーシュと共にブリタニアに反逆し続けた。」


「っ!じゃあ貴方はっ」

驚愕の目でその人物を見上げた。

その顔に満足にし、皇帝・シャルル・ジ・ブリタニアは不適に笑った。


「貴方には世界の為に、共に協力していただく」


そしてその男の瞳が赤く光った。


流石にライもとっさのことに反応できなかった。


「い、嫌だっ」

だがその叫びは虚しくその目にはギアスのマークが浮かんだ。


「シャルル・ジ・ブリタニアが命じる。

 再び目覚めてから今日までの記憶を全て無に!!」


















































その日ヴィレッタ・ヌゥはブリタニア本国に来ていた。


黒の騎士団から脱出後、彼女はゼロの正体を突き止めた功績として中佐に昇格した。


それからすぐのことだった。

彼女は皇帝命令により本国ブリタニアに呼び出されていた。


(・・・ゼロの件か・・・?)


事件について、ゼロの正体は極秘中の極秘となり、軍の関係者でもほんの一握りの人物
しか知らされなかった。



正体が気になる以前に、ゼロは『殺された』のだからそれに対する人々の不満はあまり
なかった。



指定された場所は彼女が軍に入ってから一度も、訪れたことも聞いたことも無い所だった。


指定されたパスワードに指紋・網膜・声帯検査の後、その扉はゆっくりと開いた。


そこは薄暗く、先ほどまでの部屋とは全く違うものだった。

アンティークもののランプや、豪華なシャンデリア、華やかな壁紙と絨毯は無くなり、
無機質な壁に明かりは申し訳程度に5メートルくらいの感覚で設置されており、扉もなく
ただ廊下だけが通じていた。


そして暫く歩いていると廊下の奥の無機質な扉にたどり着いた。



襟を一度正し、小さく深呼吸をする。


そして扉を2回ノックする。


「どうぞ。」


中から聞こえた声に一瞬戸惑った。

聞こえてきた声は小さな子供の声。




「失礼します。」

不安を押しのけ開いた扉の先には小さな子供と青年が2人いた。


部屋の真ん中にベットがあり、一人の青年はそこで横になり静かに目を閉じていた。
そしてその青年を囲むように少年はベットに腰をかけ、もう一人の青年は反対側で立って
いた。


(っ!あれは・・・)


その内の、一人の青年を見たとき頭に小さな痛みが走った。


ベットの上で眠る、銀の髪の青年。

だが彼女が彼を知っている筈は無い。

彼は世界から消えた存在。
彼自身のギアスの力により存在を否定した。


それに真相を言うと、彼女とライのいままでの接点はほぼ無い。

ライは黒の騎士団の幹部をしており、その正体を知る人は少ない。
ヴィレッタは純潔派として黒の騎士団と対立していて、彼女が記憶を失って黒の騎士団
の元にいたころにもライとの接点は無い。
それに二人が一緒に黒の騎士団にいた時間は短い。
ライはその後すぐに黒の騎士団から去った。


よって二人が関わった事は実質上ない。


だが彼女は見かけたことがあった。

黒の騎士団の上位の方にいて、仲間たちと笑う彼を。
幸せそうに笑う銀の髪は彼女に強い衝撃を与えた。


その時の彼女は覚えていないが、軍人であるヴィレッタは身分が低いため、貴族や皇族に
憧れを抱いていた。


だから多分彼女には分かったのだ。
ライの気品から身分が高いものだと。


そしてそこには憧れのような強い感情が残った。








「君はゼロの正体を知っているんだよね?」

はっと気がついたら目の前に先ほどの子供がいた。

驚いて声が出ず、ただ首を縦に振った。



「なら僕たちに協力してほしいんだ。
まあ後はロロに任せるよ。」


そういうとその子供はそのまま部屋を出て行ってしまう。



そして代わりに部屋にいた青年が動き出す。

青年と言うにはまだ足りないあどけなさが残る顔。

栗色の髪に紫の瞳。

だがその足取りは普通の少年とは違う。


軍人であるヴィレッタにはそれが分かる。



そして目の前まで来るとバーコードのみの名刺サイズの紙を差し出してきた。


「これは・・・?」


「これからあなたには機密情報局で働いてもらいます。」


(『機密情報局』?、聞いたことも無いな・・・)


それを悟ったのかその青年は続けていった。


「皇帝直属の秘密部隊のようなものです。
 その中で貴女には上司として皇帝の命を受けていただきたいのです。」

淡々と語る口調には感情が一切伝わらない。

「なぜ、私が・・?」

「それは貴女が一番分かっているんじゃないでしょうか?」


たどり着く答えは一つ。


「ギアスの力・・・」

静かにつぶやくヴィレッタを横目で見つつ、青年はベットを振り返った。



「それともう一つお願いが。」


「・・・」


「彼はもうすぐ目覚めます。
 彼に軍や皇帝の事、戦闘やKMFの事、そして彼が遣えるべき人間の事を教えてあげて
 ください。」

それだけ言うと青年は其のまま部屋を出て行こうとしたのでヴィレッタは慌てて青年を
引き止めた。

「まだよく分からないことが!」

「他の局員達に聞いてください。」

そういって振り向くことなく出て行く青年にもう一度だけ声を掛けた。


「せめて名前は・・・」



そういうと青年はああ、と小さく声を上げて振り返った。


「僕の名前は『ロロ』です。

 それから彼の名前は   






止まっていた時計は動き出す。







========================================

いつもよりだいぶカオスです。

皇帝の口調が難しいです;;



なんとかヌゥさんを絡ませた^^;)!










MAIN