始まりの島へ



V.V.に連れられてライはある所にいた。

神根島。




ここは「狂王」が眠った場所。

そして「ライ」が始まった場所。




原点にして終点。



前に誰かが言っていたことを思い出す。

『はじまりのおわりと、おわりのはじまり。』





後悔はある、だから後悔は無い。





辺りは日が暮れて、ほんのり青白い三日月が浮かんでいた。

何も言わず、ライはただ遺跡をまっすぐ目指した。

V.V.も静かにライの後をついていった。




聞こえるのは二人の足跡の音と、静かに無く虫の声のみ。







暫くすると洞窟に着いた。

その中からほのかに薄暗い赤い光がもれている。







そしてその洞窟の前で立ち止まり、中の赤い光を見た。

「ライ」

「分かってる。」


自分がここでしなきゃいけないことは二つ。



まずみんなの記憶から『ライ』を消すこと。




そして狂王としてまた再び眠りに付くこと。





民の為、全ての罪を償うまで自分は死ぬことが出来ない。











ライとV.V.は再び歩き出し、洞窟の奥、遺跡の扉の前まで来た。







ライはそのギアスのマークの入った床の中央まで来た。

その天上は穴が開いていて、そこからちょうど真上に月が見えた。




やり方なんて知っている筈が無いのに、なぜか自然と口から言葉が出てきた。


それは古の呪文。


ライには自分自身でも何を言っているのか聞き取れなかった。

だが言葉を言い終わったとたん、足元の石の床が青白く光りだした。




「っ!?」


ライが吃驚する間にその光は上に上がっていき、四方へと飛んでいった。





何が起こったのか感覚的にライは理解した。

(これで全て元に戻る・・・)





そしてライはその光が飛び散った後、再び静かになった遺跡の扉の前まで来た。



ライが前に手をかざすと、その重い石の扉は大きく振動した。


「・・・」

ライはゆっくり眼を瞑った。



(せめて・・・今度起きるときは平和な世界がいいな・・・)

そしてそう思った瞬間罰の悪そうな顔をする。


(もともと平和の世界は僕が壊したんだ。

  僕には幸せになる権利なんてないのに・・・)


ライはぼやける感覚の中、あることが頭を過ぎった。



(僕がここで眠ることは本当に罪を償うことになるんだろうか・・・?)




ライが一歩扉の向こうへ進もうとしたとき、異変が起きた。

扉の奥へ入ろうとしたら、向こう側から鋭い風が起きた。

本来風は「吹く」ものだが、この場合こっちのほうが正しい気がする。


まるで風は、ライが入るのを拒むかのようだった。

そして開きかけていた扉はさっきより勢いよく閉まる。






後ろの方でV.V.がくすくすと笑う声が聞こえる。



「ライ、君にはまだうやってもらうことがあるんだ。」



その言葉は、ライの耳には届くことが無かった。



ライはその場に倒れこみ、意識を失っていた。








V.V.はゆっくりとした足取りでライに近づいた。



そしてそっとしゃがみ、倒れているライの頬をなでた。


そんな時、後ろから高いテノールの声が響いた。


「V.V.、また一つ、駒がそろったね」


栗色の髪に紫の瞳。

整っているが、まだ幼さを残す少年は台座に乗っているV.V.に近づいた。






「やあ、ロロ。どうしてここに?君の任務じゃないだろう?」

その声は咎めるようなものではなくて、ただ純粋に疑問の色がでている。


「皇帝陛下が珍しく肩入れしているものって聞いたから。

 この人がその例の『狂王』?」


ロロと言われた少年は倒れている人物を覗き込んだ。




確かに眼を瞑っていても分かる、その整いと高貴さ。



この人は本当に目を覚ますのだろうか?


ロロは自分でもなぜ自分がこんなことを思ったのか不思議に思った。



そしてこの出会いが、このロロという少年を大きく変えることになる。


















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