世界が平和になった後












世界は平和になった。










確かに世界は平和になったのだ。









たくさん犠牲はあった。






この平和はたくさんの悲しみの上で成り立っている。








そしてその犠牲の中にはある一人の男の命がある事をルルーシュは絶対に忘れない。







その一つの命はたくさんの犠牲者の中のほんの一人に過ぎないかもしれない。


だがその一人の命が世界を平和にしたのだ。

















オレンジ畑にある大きな木の下にルルーシュは座って静かに農場を見ていた。


(なぜ俺は生きているんだろう)





答えは簡単考えるまでも無い。



ライが自分を助けたのだ。







ルルーシュは普段このオレンジ畑で過ごすことが多い。


ここにいる以外は行政の方を行い、ブリタニアと日本を忙しく往復している。


その働きから、今世界は彼の力で平和を保っているともいえる。








そして今、黒の騎士団、ブリタニア帝国の間で一番の問題となっているのはライについてだ。

















あのからライの体は行方不明になっている。









考えられるパターンは1000以上。


ライは元々黒の騎士団の団員。

そしてその双壁とも言われていた。

その後ルルーシュと共に、ブリタニアについた。

そして最後は皇帝としてゼロ・レクイエムを終わらせた。



黒の騎士団のころに、軍の人間から怨みを買っているかもしれない。

更にルルーシュについていったことから、黒の騎士団の団員にも怨みをかっているかも
しれない。

そして最後は皇帝として、全世界の人間から怨まれただろう。






よって連れて行った人間の対象はすべての人間といっても過言はない。






少なくともナナリー、スザクからの情報で、軍の人間ではないことが分かった。


だが、黒の騎士団の人間についてはよく分からない。


ルルーシュのやり方に関して、カレンや玉城などはすぐに認めてくれたが、まだ黒の
騎士団の中にはルルーシュに反感を持つものもいる。



だがカレンが言うには黒の騎士団の人間も、必死でライを探しているらしい。


特に神楽耶など、キョウト六家や藤堂などの元日本解放戦線の団員たちは持てる権力
すべてを使って探している。




そしてもう一つ気にかけていることがある。



あの日から姿を出さないC.C.。



元々自分は死ぬつもりだったので、それ以降のことは彼女の自由だ。





あの場からライを連れて行ったのはもしかしたらC.C.かも知れない。


いや、間違いなくC.C.の仕業だ。





あの場から、誰にも見つからずにライの体を運び出すのはほぼ不可能だ。





(・・・あいつは何を考えてるんだろう・・・)












そしてルルーシュは静かに眼を閉じた。



鳥の囀り。





暖かい空気がゆっくりと流れる音。





木についている葉っぱがかさかさと風で揺れている。









ルルーシュはゆっくりと眠りに落ちながらふと思った。


(まさか自分がこんな所でこんなのんびりとした時間を過ごすとはな・・・・)







そしてこの幸せを作り出した今は亡き人物を思う。



(なあライ、これがお前の望んだ世界なのか?)










そして浅い睡眠をしていると、誰かが走ってくる音が聞こえた。


アーシャがピンクの髪を揺らしながら走ってくる。

「ルルーシュ。」

「・・・なにかあったのか?」

ルルーシュが体を起こすとアーニャは携帯の画面を差し出した。

「・・・分かった、今すぐ政庁に行く。」



そしてルルーシュは歩き出す。


もうその歩みに迷いは無い。











そして青年は歩きだす。


もう道を間違えないように。


もう二度と歩みを止めないように。



彼が望んだ道を―。














(まさか自分がこんな所でまたこんなのんびりとした時間を過ごすなんてんね・・・・)


アッシュフォード学園の屋上で、カレンはルルーシュと同じようなことを考えていた。


そこから見える景色は2年前みんなで見たものとはまた別なもの。



2年前はすべてがきちんと整備されており、そこから見える世界は平和ーのように見え
ていただろう。



だが違う。

日本人はゲットーへ追い込まれ、その名前すら奪われ、ブリタニアに迫害され続けてき
た。




そして今見える景色はあの時と全く違うものになっている。

所々、丸い穴があったり、このアッシュフォード学園の一部もそうだが大きな穴がある。



これは黒の騎士団とシュナイゼル率いる旧帝国軍とルルーシュ率いる新帝国軍が争った
時に出来た戦争の跡だ。



だが不思議なことに、こんな物騒な跡が残っていてもカレンは今の世界が一番平和だと
思う。


そう思うのはカレンだけではない。


全ての日本人は言うまでも無いが、この世界的な平和に世界のほとんどの人間が平和
と感じているだろう。





カレンが黒の騎士団にいたころ、二度と戻れないと思っていた。



だが学園は彼女を「紅月カレン」として優しく迎え入れてくれた。





またあの時と同じように通えることが出来てとても嬉しい。



でもあの時と同じ時間はもう過ごせない。


シャーリーはもうこの世にいない。

「スザク」は消え、ゼロとして生きている。

ルルーシュは世界の悪の象徴となった。





そしてライはルルーシュとして世界の平和の為に死んだ。







そして世界は平和になった。




でも彼がいない。






カレンはここ暫くある人物の言葉がずっと心に引っかかっていた。






それは『ゼロ』となったスザクとの多分、最初で最後の会話になるだろう。



『・・・本当に・・・?』


『ああ。』


スザクはカレンにはっきりと言った。

枢木スザクの名を捨てると。




カレンがその言葉を聞いたとき驚いてスザクの顔を見上げたが、スザクは顔色一つ変え
なかった。



その態度でカレンは悟った。


(もう変えるつもりはないのね・・・)



そして『枢木スザク』に最後の質問をした。


『あなたに後悔は無いの?』



『ああ、ない。』


そしてスザクはカレンの目をまっすぐ見た。



『彼が呼んでくれないなら名前なんて意味が無いんだ。』










その言葉を最後にカレンの前から『枢木スザク』は消え、そして『ゼロ』になった。










結局ライとカレンの別れは最後は和解出来ずに終わってしまった。



(せめて最後にもう一度会いたかったな・・・)

そこで初めて気づく事実があった。

自分はライのことが好きだったんだ。



いや、好きなんだ。









要するに話を要約するとこうだ。



元皇帝専用回路を使って連絡をしてきた人物がいる。




それだけでも政庁は大騒ぎになるのだが、その連絡してきた人物のせいで今政庁は軽く
パニックを起こしている。






その人物とは


「いやー、いきなりのことでホントすいませんねー!!」


大らかに笑いそしてつかつかとルルーシュに歩み寄って手を取り、ぶんぶんと振り上げた。




ノネット・エニアグラム。


ナイトオブナインの称号をもち、コーネリアの仕官学校時代の先輩でもあり、「ブリタ
ニアの魔女」の異名を持つ彼女ですら頭の上がらない人物でもある。





(噂に聞いていた以上の人間だ。)

それがルルーシュの素直な感想だった。





「まったく私がいない間に世界は変わりましたねー!!」


「そうですね。」


「そういや陛下は日本で過ごされてたんですよねー!」


「もう私は陛下と呼ばれる身じゃ・・・」



「まあまあ細かいことは気にせずに!」

そしてニコニコと笑いかえしてくる。

(駄目だ・・・このまま言ったら流されてしまう。)


そしてルルーシュは表情を変えた。





「貴女がここにきた本当の理由はなんですか?」

その言葉を言ったとたん部屋の空気が変わった。


「そうですねー・・・世界を真相を知る為、ですかねー」


先ほどと口調は変わっていないが、ノネットの目はもう笑っていない。



「いいでしょう、話しましょう。『ゼロ・レクイエム』の全てを。」















「・・・明日の為に、平和な世界を作り続けなければいけないんです。」





ルルーシュが全てを言い切りまっすぐノネットを見上げると、そこには真剣な眼差し
の彼女がいた。





その瞳は真っ直ぐで、銀の騎士を思わせる。





「・・・あなたが皇帝で良かった・・・」



「だからもう俺は皇帝じゃないんですが・・・」



そういうと二人は笑い出した。


ノネットは大らかに、ルルーシュは静かに。












暫く世界各国の様子について話しているときノネットがふとした間に話題をかえた。




「あ、そうだ陛下!陛下は動物を飼ったことはありますか?」


今までの話題と全く違う話なのでルルーシュは一瞬なにかの複線の話なのかと考えたが

このノネット・エニアグラムはそういう会話を好むタイプではない。


はっきりしたことが好きな彼女にとってこの質問には深い意味は無いのだろう。




と、いう結論に3秒でたどり着いたルルーシュは呼び方に対しては触れずに答えた。


生徒会室にいたアーサーは飼っていたことにはいるだろうか。

「一応、猫を。」

するとノネットは少し真剣な顔で考える仕草をした。

「猫・・・まあそんな感じか。」

不可解な発言にルルーシュは眉を寄せた。


「それが・・・?」


「いやー、最近飼い始めたんですがなかなかこれが大変なんですよー!」


「はあ・・・」


「手紙と一緒に任務先に私充てに届けられていたんですよー!」


「?」


「怪我をしていて3日ほど眠り続けていて、眼が覚めたと思ったら行き成りひっかかれ
まして・・・」


「・・・」


「でも最近慣れてきて、私が家に帰ると玄関まで迎えに来てくれて・・・」


ノネットは幸せそうに話す。



「陛下も見に来ませんか!?」


「えっいや、結構ですが・・・」


「そうですか!じゃあ今度の日曜あたりはどうですか!」


悪徳商法の電話手口と同じようにルルーシュの返事を肯定受け取るノネットは一人でど
んどん話を進めていく。





「だから結構と、」


「あっすいません陛下!これから仕事があるので!!」


そういうとそのまま部屋を走って出て行ってしまうノネットを呆気にとられてルルーシ
ュは見ていた。




(もう合うことはないだろうな。)


そう思って扉から眼を離し、ノネットが座っていた椅子に目を移したルルーシュはふと
思う。


(そうはいかないか・・・)



椅子にはナイトオブラウンズのマントが掛けられていた。















ルルーシュは傘を差しながら田舎道を歩いていた。


紙袋を一つだけ持ち、その中にはノネットのマントが入っている。



普通ならばだれか政庁の人間が届けに行けばよかったのだが、今回の場合そうはいか
ない。



ナイトオブラウンズのノネットが政庁に来た事も極秘の話である。


そのノネットが会いにきた人物に対しては極秘中の極秘。



もし今、ルルーシュが生きているということが世間にばれてしまったら世界は混乱す
るだろう。




今思うとあれはわざとルルーシュは確信する。



ルルーシュに逃げ道を与えないノネットのやり方はスザクがいっていた通りだ。








季節は夏のど真ん中。


不安定な天気に振り回されつつも暑い中何も言わずに水溜りをよけて歩く。



ぱらぱらと傘に響く音がだんだん小さくなってきた。




歩く道に違和感を感じる。

(・・・迷ったか?)






傘をとじて辺りを見回す。



流石ラウンズの家を言うべきか、


「・・・広すぎる。」



その広さはアッシュフォード学園の敷地全部を足しても埋まらない程。



暗い森のなかを歩いていると、暫く先に光が見える。


木と木の間が眩しい光で溢れている。




ルルーシュが迷わず駆け足で森を抜けるとそこは別世界だった。




一面の花畑。


そのだいぶ奥には赤い屋根の屋敷がかすかにみえる。





ルルーシュは吃驚してその場に立ち止まった。



今の時期が時期だけに花畑はすべての花が満開であった。


仕切りはほとんど無く同じ種類の花がその辺りにたくさん無造作に咲いている。



どの花も自由に、元気よく、空を向いている。



ブリタニア宮殿でもたくさんの美しい花を見ていたが、ルルーシュは初めて花を心から
綺麗だと思った。





ルルーシュはゆっくり歩きだして花と花の間を歩いていく。



赤い薔薇、黄色いヒマワリ、ピンクのオパール。


ルルーシュの知らない花もたくさんあり、そのすべてが綺麗だった。








歩いていると赤い花に出会う。


たしか名前は


「彼岸花。」




ルルーシュは手を花を見ようと手を伸ばした。


「気をつけたほうがいいですよ。」


後ろのほうからの突然の声に驚いて振り返るルルーシュは更に驚くことになった。



紺のつなぎにオレンジ色のT-シャツ。


白い軍手にそれよりも白い細い腕。



麦藁帽子の下には銀の髪。


そして優しい蒼い瞳がこちらを見えてる。



「有毒性があり、名前にはこれを食べた後は『彼岸(死)』しかないという説もあるん
んです。」



その声はあの時と変わらない。

自分を好きと言ってくれたあいつと同じで。




「日本では不吉な花とされていて、確か花言葉はー。」


「『悲しい思い出』。」


ルルーシュがようやく言葉を紡ぎだすとライは優しく微笑んだ。



「もしかしてノネットさんのお客さんですか?」


「ああそうだ。君は?」

ルルーシュは表面上は冷静に対応した。

本当なら今すぐ抱きしめてやりたい。

だがあえてそれをしない。


ルルーシュには一つの考えがあった。



目の前にいるのは正真正銘本物のライだ。



だがライは自分に気づいていない、というよりも。



「ライ、です。はじめまして、えーと・・・」

「ルルーシュだ。こちらこそ」


『はじめまして』という言葉で確信をもつ。


「君はここに住んでいるのかい?」


「いえ、ノネットさんに拾ってもらって」


「それ以前は?」


誘導尋問のように答えを導き出す。


「それは・・・」


「もしかして、記憶喪失なのか?」


「はい、そうなんです・・・」

ライが悲しそうな顔をする。

(やはりそうか。)



「気がついたら緑の髪の女の人が覗き込んでいて・・・」



(C.C.か・・・)





やはりライが生きているのはC.C.がやったことらしい。


まあルルーシュには元々確信があったのでそのことにはあまり驚かない。





「・・・君は彼岸花が好きなのか?」


いつのことかもう覚えていないが、ライはアッシュフォード学園でこの花を持っていた
ことがあた。





『ライ、それどうしたんだ?』


ルルーシュが怪訝な顔でライに近づく。


『綺麗だろ?君にプレゼントしようと思って・・・』


『・・・いいか、彼岸花っていうなはな』


『日本ではあまりいい花とされてないんだろう?』


『分かってたのか?』


『うん、だけど綺麗だろ?』


そういって微笑むライは優しい目つきで花を見る。


『だけどこんなに綺麗なのにそんなこと言われて可哀想だろ?』


『そうだが・・・』


『それに・・・』

ライは愛しそうに花を見つめる。


『なんだ?』

ルルーシュが尋ねるとライは顔を真っ赤にした。


『と、とにかく、僕は君にこれを貰って欲しいんだ!!』


『わ、分かった』


ライの勢いに押されてルルーシュはこの花を受け取ったことがあった。









「はい、でも不吉であると忌み嫌われることもあるらしいんですが・・・」


その花を見る目は変わらない。



「・・・なんで君はその花が好きなのか?」



そういうとライは少し困った顔を作る。


「えーと、ただ純粋に綺麗ってのもあるんですけど・・・」


「・・・・」


「やっぱり花言葉が好きだから、かな。」



「え、でも彼岸花の花言葉は『悲しい思い出』だろ?」


「それもあるんですけど、僕の知っている花言葉には三つ意味があるんです。



 韓国で彼岸花は、『相思華』って呼ばれてるんです。


 これは彼岸花が花と葉が同時に出ることはないから「葉は花を思い、花は葉を思う」


 そこから来てるんだと思います。



 その花言葉は、花言葉は、




     『想うはあなた一人』     」






ルルーシュは眼を見開く。




(あの時、ライは・・・)



「ライっ!」

「えっ?」


気がつくとライはルルーシュに抱きしめられていた。



地面においた紙袋が倒れる。

戸惑うライは何も出来ずにただルルーシュの腕の中にいた。

「あの、ルルーシュさ」


「ルルーシュだ。」

「え?」


「お前は俺のことそう呼んでいた。」


「・・・っ」



ライはびくっと肩を振るわせた。



「僕は・・・僕はっ」


「『すっと傍にいてくれ。』」



「あっ・・・」


ライが小刻みに体を震わせている。


ルルーシュは更に強く抱きしめた。


「『これからも俺の傍に。』」


そして抱きしめていたライを開放してルルーシュはライを見つめた。



「・・・る、るるーしゅ・・・」


ライの蒼い眼から涙が一筋こぼれた。






「・・・僕は、・・」

ライの流した涙が顎をつたって地面に落ちた。


「ライ。」

「っ・・・」






「俺も、お前が好きだ。」


そしてルルーシュは微笑んだ。




「ルルーシュ!!」

ライはルルーシュに抱きついた。
















三つ目の彼岸花の花言葉。



それは、









また会う日を楽しみに















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随分と長くなりました。



書くのに2週間位掛かりました・・・・


でもそれにしては内容が薄いような気がします。

やっぱりハッピーエンドが好きです。


でもグダグダ感が抜けない笑))




最後のカギカッコは反転すれば見れると思います。





良かったら感想とか下さい♪

正直、こういうENDを期待してました!






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