トマトジュースで乗り切る夏






注*番外編みたいな物です。詳しくは日記をご覧ください。













テレビや漫画やアニメや本の中の吸血鬼は、定番と言っていい位、トマトジュース
を飲んでいる気がする。





真夏日のある日、ライはベットでごろごろしていた。
さすが王室のベットだ。
ふかふかして気持ちいい。


これで冷房もついていたら文句なしだ。
窓を全開にしても生ぬるい空気しか入ってこない。
最初はうちわで扇いでいたがそれすら疲れてしまい、ベットに寝転んでた。


完全無敵の吸血鬼も暑さに弱いらしい。


そんな他人事なことを考えていたら不意に扉が開いた。



「ライ」
「ライー、元気にしてたか?」


ナイトオブシックスのアーニャ・アールストレイムとナイトオブスリーのジノ・ヴ
ァインベルグが袋を持って、ノックもなしに入ってくる。

通称温度差コンビ。


陽気な自由人と無表情少女。

ボケとツッコミ、ただこの二人の場合立場が逆転してもいける。

「さんとろくか・・・」

「だーかーらー、名前で呼んでくれって言ってるだろう!」

「・・・ちゃんと呼んで。」

「別にいいだろう、呼び方なんて。今日は何の用?」

「別によくない!!」

「・・・よくない。」

「気が向いたらちゃんと呼んでやるよ。」

「ライは?気まぐれだなー、あっそうそうこれ差し入れ」

そしてジノは持っていた袋から何かを取り出した。


「じゃーん!!」

「・・・じゃーん。」

ワンテンポ遅れのじゃーんにつられてライは顔だけ振り向いた。
ジノが缶ジュースを一本高々と上げている。

「なにそれ」

「なーんと、トマトジュースだ!」

「いや、見れば分かるよ。何で?」

「・・・飲むかと思って。」


そういえば吸血鬼といったら定番にこれが出てくる。


本来吸血鬼というのは血だけで生きていけるが、飲むとみな『見返り』を求めてく
るし、自分の欲を抑えられないのでライはあまり血を飲まない。


血を飲まない吸血鬼といったらこのトマトジュースが定番だ。




だが、ライはそんなトマトジュースを飲んだことが無かった。



もし代用出来るのなら、そんなありがたいものはない。



手渡された缶をじっとライは見つめていた。

ジノとアーニャはライが起き上がったので、ベットの空いたスペースに座り、それ
ぞれアイスの袋を開けていた。


アーニャは○ピコ、ジノは○ーパーカップを食べていた。

ライは缶を空け、ゆっくり一口飲んでみた。



口の中にトマトのすっぱさが広がる。

「まずっ」

「えー、ダメなのかー?」

「・・・意外。」


なぜ、世の吸血鬼はこんなものを飲めるのだろう。

このどろどろとした感覚は血とは全く違うものだ。

この色もそうだ。まるで献血ようの保管したものと色が似ている。



ライはその一口飲んだ缶をベットの脇の机に置いた。


(不味い、口直しが欲しい。)


ちらっと横目でベットに座り込む二人を見る。



幸運なことに、ここには美味しい餌 ナイトオブラウンズ がいる。


薄く微笑みを浮かべた。

「ジノ、アーニャ、頂戴」

「えっ、だったらミルクの棒アイス買ってくればよかったなあ・・・」

「・・・ジノ、卑猥。」


「いや、アイスじゃなくて・・・血が飲みたいんだが・・・」
というかライには何のことかよく分からなかった。

「えっ!?」
「・・・」

二人とも驚いた顔をしている、といってもアーニャのいつもの無表情は崩れないが。

そしてすぐに我に返り勢いよく言う。
「じゃあ私の血を!」
「私の。」


ジノとアーニャはお互いの顔を見た。

「アーニャはまだ幼いから、献血は駄目な年だよな!」
「平気。ジノより若いから私のほうがおいしい。」

「アーニャの血なんて、若さだけで味気なさそうだ!」
「ジノののは要らない栄養分が多そう。」

二人の間によくない空気が流れる。

当の本人ライはというと、
(お腹減ったしどっちでもいいんだが・・・)

当人のはずだが、一人かやの外にいた。



「じゃあここはナイトオブラウンズらしく!」
「KMFで勝負。」


そして二人はライの部屋を飛び出していった。



一人部屋に取り残されたライはつまらなそうに、またベッドに横になった。

そこへ小さなノック音がし、一人のラウンズが入ってきた。

「ライ、ジノとアーニャが凄いことになってるんだけど・・・」

「スザク・・・」

ああまた美味しい餌が入ってきた。






30分後、結局決着がつかなかった二人はライを探しに戻ってきて<ベッドが空にな
っているのを見て、また言い争いをはじめた。



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