自覚した心





僕は最近気が付いたことがある。

「ライー!」

遠くからスザクが笑顔で走ってくる。

「スザク?軍の仕事はいいの?」
「うん!今日は休みなんだ、だから一緒にお昼食べよう!」


そういってスザクはライの返事を待たずに手を引っ張っていく。

(あ、まただ・・・)



最近気が付いたのだが、スザクは手を握ったり、後ろから抱きついてきたり・・・
なんといえばいいのだろう。

そう、スキンシップというのが少し他人と違うというか、少し過激というか・・・


別に最初は気にしていなかったのだが、この間リヴァルと話していたときに気が付いた。


『そーいやさー、スザクとライってかなり仲良いよなー』
『そうかな』
『いやー、なんか仲良すぎっていうか、ちょっとさー・・・』

そういって僕のほうをじっと見て、リヴァルは口を濁した。

『・・・?どうしたのかい?』

そういうとリヴァルはそっと声を落として言った。

『スザクとライってさー、ぶっちゃけどういう関係?』
『どういう関係って?』

質問の意味が分からず、聞き返してみた。

そういうと、リヴァルは更に声を潜めた。

『だからさぁ・・・、実は二人ってできてんの?』
『・・・・は?』

一瞬質問の意味というか言葉の意味が理解できなかった。

『だーかーらー!ぶっちゃけできてんだろ!!』

ああもうじれったいというばかりにリヴァルは真剣な顔で聞いてきた。

『えっと、出来てるって僕とスザクが?』
『おう!』

ライは一度ゆっくり息を吸ってはいた。
そしてゆっくりリヴァルを見た。

いたって真剣な眼だ。

『リヴァル』
『なに?』
『僕は男だよ』
『いや、知ってるし』
『そしてスザクも男だよ』
『だから知ってるって!』

あれ・・・おかしいなまだリヴァルは言葉の意味を理解してないのかな。

『だから僕は
『だから知ってるって!!で、どうなんだ!?』

昼休みの中庭。
さっきから大声を出している(リヴァルが)所為で、ライとリヴァルは注目を集め
ていた。
そしてひそひそと何か話していたが、そのときのライには何を話しているのか全く
分からなかった。

僕はため息を一つついた。
『はぁ・・・なら分かるだろう?
 僕は男、スザクも男。
 付き合ってるわけ無いだろう』
『あ、なんだやっぱそうなのかー』
『分かってるならそんな当たりまえの事きくなよ』
『いやでもさー、色々噂あったしー』

リヴァルはこの手の噂に関してはかなり詳しい。
ミレイさんやルルーシュですら知らないことまで知っていたりする。

『噂って?』
『えーと、色々あるけどなー。
 よく一緒に買い物いったり、ゲットーに行くのを見かけたって』
『ゲットーのことは生徒の中で一番スザクが詳しいから一緒にいってるだけだし』
『よく体育の授業でペア組んでるし』
『スザクは体力馬鹿だから、ペア組むの嫌がる人いるから一緒に組んでるだけだし
。』
『しょっちゅうスザクはライに勉強とか、生徒会のこととか聞きに行くし』
『スザクは軍の仕事があるから、授業に出れないことが多いから。
それに生徒会メンバーのなかで一番暇なのは多分僕だし。』
『それにスザクが図書室でライを押し倒したって』
『それは単に図書室で本を探してたら落ちてきて
 スザクが助けてくれただけだし』

『うーん・・・そっかーやっぱりガセかー』
『大体普通に考えれば分かるだろう』
『まあそういわれてみればそうだよなー』
そうしてリヴァルは手帳を取り出してなにか書き込んでいた。
『せっかくの大スクープだと思ったのになー』
そういってリヴァルは手帳をぺらぺらめくった。

『あっでも!』
なにか思い出したのかリヴァルは顔を上げた。

『まだなにかあるのかい?』
『いや、ふと思ったんだけどさー』
『・・・?』
『スザクってライに対してスキンシップ過激だよなー』

『スキンシップって・・・え?』
『ふと思ったんだけど、抱きついたり、手繋いだり・・・』
『それって日本の文化とかじゃないの?』
『それ普通は逆。
 なんか日本人は「奥ゆかしい」らしいから』
『じゃあブリタニアの文化じゃ・・・?』
『なわけ無いだろー
 じゃあ今までスザク以外の誰かにそういうことされた?』


あるわけが無い。てっきり日本の文化だと思ってたから、今までほとんど気にして
いなかった。

『・・・・』
『そんなに悩むなよー。
 でも実際そういうことじゃないんだろ?
 だったら気にする必要ないぜ!』

そういって、昼休みは終わった。



そして僕はスザクに握られてる右手を見た。

「スザク」
「何?っていきなり止まらないでよ」

ライに引っ張られてスザクも走るのをやめ、振り返った。
それでも手は離れることが無かった。

「どうしたの?」

静に見つめるその眼はとても優しい。
その視線から逃れるようにライは下を向いた。


「・・・・・・」

「ライ?」



(なんだろう、この気持ち。)

リヴァルに言われてからか、変に意識してしまってなぜか恥ずかしく感じてしまっ
た。
ただ手を繋ぐという行為だけなはずなのに。
この行為に深い意味は無いはずだ。

(だいたいスザクはなんで・・・そういやスザクはどうなんだろう)

自分がこんなに意識してしまって恥ずかしいのに、スザクは全くいつもと変わらな
い様子だ。

(やっぱ慣れてるのかなぁ・・・)
そう考えたら、何故かもやもやとしたものが出てきた。

(こっちはスザクの所為でこんなに・・・!)


「・・・ライ?」

そんなことも知らずにスザクはライの顔を覗き込んだ。

「もしもーし、顔赤いよ?」
「えっ」

気が付いたときにはスザクは目の前で。

(あと数センチで、スザクと、)

そう思った瞬間、ライはスザクの手を振りほどって数歩下がった。

「・・・大丈夫?」

今自分がどんな顔をしているのか分からない。
スザクの顔をまともに見れない。

「えっと・・・用事思い出したから!」

そういってスザクのことを振り返らずにライは走っていった。








ライが全速力で走っていったほうをにこやかにスザクは見ていた。

「ようやく気づいてくれたかなー」
スザクは大きく背を伸ばした。

まあアレだけアピールしてきて気づかなかったほうが不思議だった。

ルルーシュなんかはとっくに気づいてたし。


(さっきのライの反応可愛かったなー)

明日とあった時の、ライの反応が楽しみな気分に浸りながら、スザクは小さく笑っ
た。