職権乱用


ライはコンコンと作戦司令室の扉をノックした。
「ゼロ、頼まれた資料を持ってきたんだが」


5秒位経った後にごそごそと人の動く気配がして、さらに10秒位かかってから
扉がゆっくり開いた。

扉が開いた先にたっていたのは、黒の騎士団のリーダー・ゼロではなく、緑色のロ
ングヘアーの少女C.C.だった。
彼女は無言でチーズ君という大きいぬいぐるみを引きずりながらゆったりとした足
取りでソファーへ戻っていった。

ライも中に入った。
部屋に入るとピザの香りがほのかに充満していた。




「C.C.、ゼロはどうしたんだい?」
「暫く出かけるといっていたぞ」
「なぜ?」
「・・・この部屋がチーズ臭いと言って消臭源を買いに行った。」


(ルルーシュらしいなぁ・・・)
確かにこの部屋にはC.C.のお陰でピザの匂いがいつもしている。
アッシュフォード学園の僕の部屋もそうだ。
C.C.が住み着いているところはほぼピザの匂いがする。



「そんなことだったら、僕に行ってくれれば買ってきたのに」
「そんなこととはなんだ。全くお前といいあいつといい、ピザのよさをなぜ理解で
きないのか・・・」

そういってC.C.はすねたようにピザを頬張った。

この魔女のピザ・・・じゃなかった、ピザの魔女ことC.C.は何故かこのピザとい
う食べ物が大好物である。

前ルルーシュにキャッシュカードの請求書を見せてもらったら、一枚びっしりと
ピザと書かれていて、その金額は少し恐ろしいものだった。


持っていたピザを食べきったC.C.はライを見上げていった。
「どうせその資料、ゼロと話し合う必要があるんだろ。
 だったら、ここで待っていろ。どうせ暇だろ?」

まあこの資料のところで仕事が止まっているから、暇といえば暇だろう。

「分かった、そうさせてもらうよ」

そうしてライは、C.C.の向かい側に座った。

持っていた資料を確認していると、向かいからぶっきらぼうな声が聞こえた。

「おい」
「ん?」

ピザを完食したC.C.はチーズ君に抱きつきながらごろごろしていた。


「暇だ。・・・そうだライ」
「なに?」
「肩を揉め」
「は?」

そういうとC.C.はソファーに座りなおして肩をライのほうに向けた。

「なんで僕が・・・」
「私はゼロの『愛人』だぞ?
 少なくともお前よりは立場は上なはず。
 それにここ最近忙しかったしな。体中が痛いんだ。」

確かに忙しかったかも知れないが、ライはC.C.が働いてるのをあまりみていない。
ライのほうがよっぽど忙しかった所為もあるが、ライ彼女を見かけたのは司令室で
チーズ君を抱いてさっきみたいにごろごろしていたところくらいだ。


(まあC.C.もギアスのこととか色々疲れてるだろうな)

それにC.C.だってここであまり話相手はあまりいないのだから少し甘えたいのだ
ろう。

(たまには彼女の我侭につきあってもいいか)



そう思ってライはソファを立った。

「分かったよ、C.C.その代わりまたピザのことでルルーシュの機嫌を損なわせな
いでくれよ」

「それはあいつ次第だ。」

ライはため息をついてC.C.の肩を揉みはじめた。

(そういえば、他人の肩をもんだ記憶がないなあ)

「C.C.、こんな感じでいいかい?」

そう聞くとC.C.は気持ちがいいのかチーズ君に顔を伏せて「ああ」とだけ短い
返事をした。


昔の記憶を探しても自分が他人の肩をもんだ記憶が無い。

それに自分も肩を揉まれた記憶があまりない。

そういえば・・・

「・・・おい」
「もういいのかい?」

C.C.はくるりと振り替えてライのほうを向いた。

「今度は私がやってやる。」
「え、別にいいよ」

そういってC.C.はライと自分の位置を無理やり交換させた。

「いいから後ろを向け」
「・・・はいはい」

C.C.は結構頑固ものだ。
一度言ったらそれを帰ることはなかなか無いので、経験論からライはC.C.に従う
ことにした。


C.C.の細く長い指がライの肩をつかんだ瞬間。

「あっ」

ライが不意に声を出した。

「・・・どうした?」
「や、やっぱり遠慮するよ!!」

そういって立ち上がろうとしたライをC.C.は無理やり引っ張りソファの上に押し
倒した。

「っ!、C.C.・・・」

そしてC.C.はライの上に乗っかり魔女のような笑みを浮かべた。

「そうかライ、お前肩弱いんだな?」

嫌な予感がする。
C.C.のこの笑顔を見てライは直感的になにかを感じた。

「そうだから、よけ
「上司命令だ」

「は?」

「逃がしは・・・しないぞ!」
そういってC.C.は手を伸ばしてきた。

「ちょっとC・あっ・・・
 やめ・・・わっ!」

「もっと色っぽい声を出せ」

「なに無茶苦茶言って・・・あ・・・」



その後すぐにルルーシュが戻ってきて、ソファーに押し倒されているライを見て
ルルーシュがまた不機嫌になたのは言うまでも無い。