ライは自分の過去を淡々と語る。



「で、そういうわけだから僕は自分に呪いをかけたんだー」



「分かったけど随分軽い説明するよなー、内容はかなりシリアスなのに・・・」


内容はかなり重いものに感じるのだが、それに対しライの口調はとても軽いものであった。
本人の態度がそうなので、ジノはどう反応したらよいか分からず少々困り顔になっている。
そんなジノの様子をみてライは首を傾げる。

ああこの子分かってないんだ・・・。

ジノは深いため息をついた。


「?、どうかしたか?」


心底意味不明ですー、みたいな顔で自分を見上げてくるライに不覚にもどきっとしたが、本人は何も分かってないようなので

ジノは更にため息をつく。



「いやなんでも・・・
 そういやなんでハロウィンの日に?」
 


「ああ、それは単純なことだ。」


そうしてライはまた説明を始める。







吸血鬼にはランクがある。


まず吸血鬼は大きく三つに分けられる。

吸血鬼から血を吸われ吸血鬼になった下級吸血鬼と吸血鬼と吸血鬼から生まれた中級吸血鬼、そして名門貴族、皇族からなる
上級吸血鬼だ。

下級吸血鬼は人間より確かに強いが中級吸血鬼には劣る。



更に中級吸血鬼も上級吸血鬼と力を比べると遥かに劣ってしまう。




更に上級吸血鬼の中でも特に優れた力をもつ限られたものの中に開祖と呼ばれる者達がいる。






開祖の力は強力だ。


簡単に国1つ落せるし、どんな兵器より最強。





そこで僕はある事に気が付いた。

もう直ぐ一年に一度のあの日がやってくる。

あの日僕は自分の書斎で古い書物を探していて、その事に気が付いたのはただの偶然だった。




その日は最も吸血鬼の力が高まる日であり、城で大きな集会が行われる。





吸血鬼の力が高まると言うのは本能が強くなるということだ。

よって暴走する可能性がかなり高い、いやはっきり言える。




間違いなく自分は暴走するだろう。






そしてそれは仲間を傷つけることになる。











そう考えた瞬間、息が詰まって視界がぶれる感覚が起こった。




寒くも無いのに、体が震えだす。









もし、僕の力が暴走したら何人の人が死ぬんだろうか。



即ち、暴走は本能の殺意のみが現れる。



もし、僕の力が暴走したら止めれる者がいるんだろうか。


ライは震える腕を動かしてゆっくり手を開いた。
その手は真っ白だが、ぶれる視界の画面が切り替わるように、鮮赤に染まった。


目を見開きあの事を思い出す。

もし―

ライの頬を涙がつたった。

「―っ」

必死に嗚咽を漏らさないように両手で口を覆いその場にしゃがみこんだ。


そんな絶望の淵に立たされた時、彼女は現れた。








「・・・おい・・・」


「ぅ・・」


それは救世主の如く。




本来ならばライは部屋の数十メートル先に居たならば、気配で誰が来たのか識別できる。

だがその時のライに余裕は無く、目の前に居るのに無視されて少々苛立ち腕を組む緑の髪に気が付くことは無かった。





流石に泣いているとは言え、これだけ近くで無視されてるのに対して彼女のそう長くは無い堪忍袋ははちきれ寸前だ。



彼女はライの正面に回りしゃがんでライの高さに合わせた。


「おい」


そしてライの肩に両手を乗せた。



「ぇ・・・ぅわっ!」








気が付くとライは天井を見上げる体制になっていた。


緑の髪の彼女に押し倒されて彼女の長い髪が頬を滑る感覚がした。



驚き見開いた目からは重力に従い未だ涙が流れている。





そんなライの様子を見て彼女は涼しい顔をして笑っている。






彼女はゆったりとした手つきで流れる涙を掬った。




「なあ、お前を泣かしたやつはだーれだ?」





そういって緑の魔女は微笑んだ。















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ようやくC.C.登場です。

それにしても書くの遅くてすいません;;



2009・07・16











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