吸血鬼と金髪青年








再びライが目覚めたとき、その部屋には誰もいなかった。





部屋には自分を治める大きな水槽とそれを制御するためのコンピューターが青白く光る
だけで、部屋の机には書類どころかごみ一つ残っていない。




手は動かせる。





ライが眠っている間、薬の作用の所為か分からないが頭の中に過去のイメージがずっと

流れていた。







そしてライは大切なことを思い出した。





自分が吸血鬼であること。


そして過去の人間であること


自分の寿命が短いこと。


その原因となる呪いのこと。


なによりその呪いをわざわざ自分にかけたわけ。




ライが学園生活で胸を圧迫するような苦しみがあったが、それはこれが原因だ。


眼をつぶって胸に手を当てると胸の奥にある黒い棘。





だが不思議なことにその苦しみは無い。





(今なら力を使えるかも・・・)


ライはその蒼い瞳を一度ゆっくりと閉じた。





そして同じようにゆっくりと開ける。



蒼の瞳が紅く染まった。


その瞬間、コンピューターの画面と水槽の光が一瞬暗くなった。

そしてコンピューターの画面が真っ青になり意味不明な文字が並んでいく。



ピッという電子音と共に画面にひびが入り、その後はもう全く反応しなかった。





だがどんなに力を使おうが、ライのいる円柱の水槽にひびがほんの少し入るだけでそれ
以上はただライが疲れていくだけだった。





諦めて再び眼を瞑ったら扉が開いた。


(まあこんだけ暴れれば人がくるのは当たり前か・・・)




扉の外に眼をやるとその更に薄暗くなった視界では人物が特定出来なかった。



だがそのシルエットからみて、バトレーでもあの少年でも無いことが分かった。


それに体格からみて研究員でも無い。


(・・・この人、出来る。)

ライの直感からもまっすぐこっちへ向かってくる足取りからも分かる。


軍人だ。

しかもかなりの腕の立つ。


(これじゃあ脱出は不可能か・・・。)


心の中でため息を付き、ライは再び眼を閉じた。



足音が近くまで来て止まった。

こんこん。


小さな音が聞こえた。


ライは気にせず眼を閉じたままでいるとまた、


こんこんというガラスをたたく音がした。




ライがめんどくさそうに眼を開けるとそこには金髪の青年がたっていた。

明るいスカイブルーの瞳に右耳には金のピアス。

(・・・これは驚いた。)

立ち振る舞い、オーラからかなりの武人だと思っていた相手は実はまだ若い青年で。


もしかしたらライと同じかそれそり少し若いぐらいだ。




『ライ。』

相手が静かに名前を呼ぶ。


自分を捕らえてる機関の人間だから敵なはずなのになぜかその声に不快なものは感じな
かった。




『今V.V.がいない、って分からないか・・・とりあえず今なら逃げれるんだ!』


V.V.が誰なのかは知らない。

だがその言葉にライは耳を疑った。

(この人は自分を逃がそうとしてるのか?)

『えーと、ライはここにいないほうがいいんだ!
V.V.はちょうど今忙しくて研究員を連れて何処かに行ったんだ。
 だから・・・』




ライは青年の言う言葉のほとんどが理解出来なかった。


いままでここの研究所の人間たちは自分のことを実験体としてしか見ていなかった。

昔の記憶でも、やさしい言葉をかけてライをだまそうとするものはたくさんいた。


ライにはもうどう判断したら分からなかった。

彼を信じていいのかダメなのかー。

そしてその青年はライを見つめていった。

『ここから出たいか?』






ただライは首を立てに振った。















『えーと、これはライがやったんだよな?』


ジノが一つ残らず壊されたコンピュータを見ていった。


それに対してライができるのは顔を顰めるだけだった。



『あ、いや責めてるんじゃなくて・・・・えーと、まあ方法はあるし。』





そしておもむろに近づいてくるジノをみてライにはこれから何が起こるかなんて予測
出来なかった。




ジノは水槽のガラスを触れて何かを調べているようだ。

『特殊ガラス・・・でもないか。
 厚さは、まあいけるか。』


なにがいけるのだろうとライが思った束の間、ジノは少し下がって間合いを取った。


『少し後ろに下がっててくれ』


無理だろう、この状況では。


ライが何も言えずにいると、ジノは息を整えた。


『行くぞ!』


まさか。


ジノは右手を握って左足を出し、そのまま反動で右手をガラスにぶつけた。




ガッシャンという音と共に水があふれ出てきた。


状況がつかめていない状態からすぐに久しぶりの外気に触れた。


浮遊感から開放され、体を支えられなくなって水槽の壁のガラスが出ている部分に

ぶつかりそうになり眼を瞑った。



暫くしても衝撃は無かった。



変わりに暖かいものが自分を包んでいる。


ライが荒い呼吸を繰り貸す音だけがその空間を支配した。


「あー・・・ライ生きてる?」

何も反応が無いライに対してジノは声を掛ける。

「・・・はぁ・・・し・・ぬ、かと・・・お・・もった・・・」

ライがやっとで言葉を発しきると、ジノは優しくライを抱きしめた。





「そういやまだ自己紹介がまだだったよな!
   私の名前はジノ。ジノ・ヴァインベルグだ。」

ガラス越しじゃない彼の声はずっと暖かいものだった。



彼にずっと抱きしめられていると、別の感情が浮かんできた。


「・・・・じの。」


「ん、どうしたライ?」





「・・・」

ライはただじーっとジノの瞳を見つめるだけで。

「・・・ら、い?」


綺麗な蒼が自分を見つめている。

水に濡れて張り付いた髪、冷えた肌、まとわり付く拘束服。


その全てから色気が漂ってしまうことは仕方が無いことで。

ジノは見つめてくる蒼をそらせないままでいると、その瞳がだんだん色が変わっていった。


深水の蒼が紅に変わった。

その瞳み魅入られてジノがはっと気が付いたときにはライと自分の差は10センチ未満
になっていた。


そのままライは薄く眼を瞑り、ジノの首にてを掛ける。

「えっ、ら・・・」

ライの腕が冷たいと思った直後自分との距離がゼロになっていた。


(///!?)


ライが口に吸い付くようにキスをしてきている。


白かった肌はほんのり色づいていて、薄く開く瞼からは紅い瞳がちらちらと見え隠れしている。





そんな吸血鬼の艶やかさにジノが耐えられるはずも無く。





唇を開け、ライの体で唯一熱い舌を絡め取った。




何度も繰り返してライの体から力が抜けてきたので、ジノはライを開放して抱きとめた。








ライの息が整うまで待つつもりで抱きしめていたが、不意にライに力が入るのを感じて
ジノは手を緩めた。



ライはゆっくり顔を耳まで近づけた。




そして唇がくっつくように静かに言った。






「・・・ごちそうさま。」





その後ジノの顔が真っ赤に染まったのは言うまでも無い。
























































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ライのキャラが違う・・・・絶対違う・・・・




今のは吸血鬼的にはちょっとした食事だと思ってください;;


ちょっとエロくしたつもりなんですが、あんまエロく無い・・・



うちに裏書くのは無理ですね;;











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