綺麗な蝶々







その事件が起こったとき、ルルーシュはブリタニア宮殿にいた。


「だから言ってるだろう!俺に戻る気は無い!」
ルルーシュは皇帝の部下の男と話していた。

「ですが殿下・・・」

「もう俺は殿下ではない。」

「・・・せめて、皇帝陛下にお会いしては・・・」

「全力で拒否する。」
縷々ーシュはきっぱりと否定を現した。

「ルルーシュ様・・・」

「とにかく俺とナナリーは戻る気なんて無い。」

「・・・はぁ、また皇帝陛下に・・・」
その男はルルーシュの前だが、おもいっきり顔を濁した。

「それがお前の仕事だろう。」

「はあ、そうですね・・・」

「そういや日本開放からあいつはおとなしくしてるな。」

「そうですね、あっでも・・・」

「何かあったのか?」

「ナイトオブスリーを貴殿の学園へ向かわせたようですが・・・」

「はぁ!?何のために!!」

「さぁ・・・何でも『蝶』を捕まえるそうですよ」

「蝶?・・・」

(ナナリーか?・・・いやだが俺が前釘を刺していたはずだが)

元・皇女殿下をそんなに荒い扱いすることが出来るはずが無い。

そうなると38から13へ可能なルートが減る。


(あいつが『蝶』という言葉を使うことは無いだろう。)

よって犯人はV.V.あたりだろう。

そうなるとその『蝶』はC.C.か・・・


その時その部下の男は何かを思い出したらしく、「あっ」と声を漏らした。


「確か・・・『銀の王』とか言ってましたね・・・」


その瞬間13のルート以外のものが思い浮かんだ。

「まさか、ライ!?」

「さぁ・・・私にはよく分かりませんが」

「何故あいつが・・・」

『銀の王』

 『蝶』

   『ライ』




この三つからルルーシュは答えを導き出した。



「・・・吸血鬼」

つぶやいた瞬間ルルーシュは行動を開始した。


「今すぐスザクを呼べ・・・」

「は・・・?」

ぼけっとしている男に苛立ちながらルルーシュは口早に怒鳴った。


「今すぐナイトオブセブンを呼べ!!!」

そうしてルルーシュは城内を慌しく行動した。






















僕は吸血鬼なのかもしれない。


いや、おそらく吸血鬼だ。

ライは学園内を走っていた。



血を口に入れた瞬間のあの甘さは中毒になりそうだ。





人が来ないところに行かなきゃならない。

そうでもしないと、誰かを襲ってしまうかもしれない。


運良く生徒が下校し終わった時間帯だ。





ライははやく部屋に戻ろうとも思ったが、帰る途中で誰かに会ってしまったらどう
しようも無いし、学園を出ても人に必ず会うことになるので、取り合えず庭園の
大きな木を目指した。





そこには誰もいなかったので、ライは安堵のため息をはいた。

取り合えず木の根元に座って体を落ち着かせようとする。



だが想いに反して体は簡単に収まらなかった。




熱い。

体からが熱が抜けない。



「はぁ・・・うっ・・・」

出来るだけ体を冷やそうと征服のボタンを外した。

そして中のYシャツの一番上のボタンを外す。


体を疼くものに耐えながら木に寄りかかっているうちにライは眠りについた。
















何だろう、体が軽い。

自分がゆらゆら揺れている感覚がする。













「お〜、これが噂のお姫様かな?」






ナイトオブスリーこと、ジノ・ヴァインベルグは木のもとで眠る男と手に持った写真を比べる。



写真はどこか、カメラとは別の方向を見ている銀髪蒼瞳の青年か少年の横顔。


角度からいってこれは盗撮なのだがジノは大して気にしなかった。

それよりもその写真の少年に興味を持った。



人形のような顔に表情は無く、はじめにこれを見たとき、写真ではないと思った。



こんな精巧な顔のつくりの人間なんているはずがない、と思ったからだ。




まあ実際、厳密に言えばライは人間ではないが。









そして目の前にその男はいる。


静かに眼を閉じる顔を見ると幼く感じ、少年というほうが正しい気がする。






「えーと、こういう時は起こさないほうがいいよな〜」




そういってジノはライをゆっくり持ち上げた。

「っ!・・・軽っ!!」


この年の少年にしては軽すぎる。

見た目は多分ナイトオブセブンのスザクと同じくらいの背・・・いやちょっと低いか?









そして丁寧にゆっくりと少年をトリスタンの操縦席にのせ、自分も乗った。



慣れた手つきで回線を繋ぐ。

「お姫様・・・いや、『蝶』奪還完了。今から戻る。」


少しして、画面に小さな少年が映った。
『了解、ありがとう。ところでライは今どういう状態?』


「えーと、眠ってるよ」

そういって自分のひざの上にいる少年を見つめた。

そういうとV.V.は見た目の年らしく笑う。

『そっか・・・ありがとう。

  そうだ、彼は暫く君たちラウンズに預けるね。』




「何故?」

そういってジノはいたずら笑う。



『・・・ねぇジノ、なんで蝶々って標本にされると思う?』


ジノは答えず、画面のV.V.をじっと見た。


『それはね、蝶々が綺麗だからだよ。』




「要するに頑丈な虫かご ナイトオブラウンズ が必要なのか。」



『・・・』

V.V.は黙って微笑んだ。














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