出来れば気がつきたくなかった





最近よくお腹が減る。






しかたがないので、とりあえずいっぱいご飯を食べる。



そうすると空腹感は無くなる。



けれど、空腹感ではない、何かが足りない気がするのだ。







あるお昼の時間。

ライは生徒会室で仕事をしていた。


食べても満腹感がえられないので仕事をして気分をそらそうとしていた。



こつこつと足音が遠くから聞こえ、その音が少しずつ大きくなってきている。


(誰だろう?)

生徒会室は三階ということもあり、滅多に人は通らない。


靴音が生徒会室の前まで来て止まった。


ライは扉を振り返る。

そして扉が開いた。


「ライ?何してるんだい?」

その人物は、


「なんだ、スザクか」

ふーと肩を撫で下ろしていたらスザクが少し不機嫌そうな顔をした。


「『なんだ』ってねぇ・・・」

「あっ別に深い意味は無いよ」

慌てて言葉を付け足す。


スザクは一度不機嫌になると中々直らないから面倒だ。



「と、ところでスザクは軍のほうはいいのかい?」

「うん、休みもらってるし・・・それとも来ない方が良かった?」

(ああやばい・・・まただ・・・)

「そんなことないよ!」

と慌てて付け足すが不機嫌な顔はまだ治らなかった。

ここは話題を変えるべきだ。

「そういやルルーシュが最近授業に出ないんだ。」

そういったらスザクは更に不機嫌な顔をした。


「僕よりルルーシュの方がいいの?」


(ああまた話が変な方向に・・・)

「だからスザクもルルーシュも大切な友達だってばっ」

「大切な・・・『友達』ねえ・・・」


そういうとスザクは黙りこくった。



触らぬ神には祟りなし。

(日本人は上手いことを言うなあ。)



仕方が無いので、仕事に戻ろうと書類を広げようとしたらスザクに書類を取られた。


「っおい!スザ

「ライ!人の話をっ・・・」
スザクが顔をしかめた。


「どうしたって・・・スザク、君って意外とドジだね」


スザクの親指には赤い線が引かれていて、その真ん中から血がでていた。

「ドジってライには言われたくないよ・・・」


そういってスザクは指を舐めようとした。



その瞬間ライはごぐりと唾を飲んだ。

「待って」

いつもより少し低い声。

「・・・ライ?」

さっきの不機嫌な顔はどこかに行っていてスザクは不思議そうな顔をしている。

つかつかとライは近づきスザクの手首をとり、そして、


「ライ!?」

「・・・」


ライは、スザクの指を、舐めていた。



ぺろぺろと傷口を舐めるライの眼はどこか色気を帯びていた。


スザクは困惑と同時にライに押し倒したくなる衝動に駆られた。


普段何気なくライがしている仕草に対してでも色気を感じていて、周りの目から
そらそうとスザクは必死にしていた。


ライはまるで人形のように整った顔をしていて、一部の生徒からは吸血鬼のようだ
とも言われていた。



人形のような整った顔、透き通る白い肌と銀の髪、そして蒼の瞳。


機械的なその表情には暖かさが感じられなかったが、何故か儚さと美麗さを浮かば
せていた。


そしてそれが幻の美形を誕生させた。


だが今は色々な表情を見せ、暖かいイメージの方が強くなった。

それで更に人気が増えたのは悩みの種であるが、ライの笑顔を見るのがスザクは好
きだ。


そんなライがこんなことをするとかなりのものになる。


普段の優しい目が甘いものに変わっている。

親指だけでなく、指の根っこの方まで舐めていてほかの指まで舐めている。

肌が白い所為か、その口から見える舌がとても赤くみえる。

それが自分の指を舐めているところを見ると、ある程度のものを感じても仕方が無
い。




スザクは空いている手でライの顎をつかみ顔を上げさせた。


とろんとした甘い目が欲情を隠せずにいて、ほんのり赤い顔でスザクを見上げる。

口の端からはさっき舐めていた唾液が少し零れていた。



スザクはそれをペろっと舐めて見る。


そしてゆっくり唇を近づけた。




あと10センチ、・・・5センチと近づいた時、ライは目を閉じた。


そしてまさに触れ合おうとした瞬間、

キーンコーンカーンコーン


「「!!」」

驚いてライは我に返った。


そしてスザクも慌てて手を離し顔を離した。




二人とも違う方向を見て気まずい雰囲気が流れた。



「あの「僕、用事思い出したから!」


そういってライは生徒会室を走って行った。



スザクは突然のことに驚いたが、暫くして顔を真っ赤にさせた。

「ライ・・・」









走っている中、すれ違う生徒は驚いた顔で走っていくライを振り返った。


頬を染まらせ涙目で走っているライを今まで見たことは無かったからだ。




「はぁ・・・はぁ・・・」


走ってついた先は屋上だった。

もう授業が始まっているだろう。



(スザクはでているのかなあ・・・)

そう考えた瞬間ライはまた顔を真っ赤にさせた。




スザクの血を見た瞬間何かが体を走った。

そしてそこから意識が無くなった。


ライは動揺しながらも何故か頭だけは冴えていた。




スザクの血を飲んだ瞬間意識がとんだ。




そして今はあれほど食べても埋まることの無かった空腹感が無い。





これから察するに僕は


「・・・吸血鬼、なのか・・・?」


そして一つの結論にたどり着いた。


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