夏だから、しょうがない(前編)





そこは黒の騎士団司令室。
ライはいつもC.C.が居座っているソファーにいた。

「あつい〜・・・」


吸血鬼はもともと北欧に住んでいる。

そのせいで暑さにはかなり弱い。






主な原因は服装にある。



ゼロにここにいるときはこの服装をしろといわれていたので、仕方がなく黒の騎士団
の団員服を着ていたが、戦闘用にもなっている所為でかなり熱い。



(あつい・・・)



前ここで少し問題を起こしてしまったので、ライはゼロから団員から食事すること
はきつく禁止されていた。



ただでさえ暑さで体力が奪われていくのに、食事禁止はかなりきついものだ。







というかこの団服は、みんな文句言わないのだろうか。

黒の騎士団には夏服がない(まあ当たり前だが)。

(騎士団の人たちは暑さに強いのか・・・?)


暫く考えていると、あることに気が付いた。




(もしかして、ゼロのあの格好に関係あるんじゃないか!?)



ゼロがあれ以上涼しい格好が出来ないからみんな遠慮しているのではないか、と
ライが色々考えているうちに司令室の扉が開いた。



「おお、ライじゃないか。」

明るいアルトの声が響いて、視界の端に翠が移ったと思ったら何かが圧し掛かってき
た。


「C.C.・・・暑いんだが・・・。」

「そうか?、私は別に暑くないぞ。」

そういってライに抱きつく手を全く緩めず、C.C.は涼しい顔をした。



C.C.は学園でライと知り合ってからよく絡むようになった。

あまり彼女は人と接することはないがどうやらライのことが気に入ったようで、
「来たらまず私に会いに来いと言っているだろう。」

といってここに来るたびに抱きついてくる。



C.C.は純粋にライが好きだというが、ライはたびたび血を吸われそうになっているの
で単においしいご飯としか思ってないと決め付けている。



この間の事件でライは分かったのだが、C.C.はライと同じ吸血鬼だ。


C.C.も過去の人間であるから、開祖とほぼ同じ血を持っているため、ゼロは、

C.C.がライを必要以上に絡むのは仲間意識によるものだと考えている。




「なーC.C.」

「なんだ?ライ」

「この格好どうにかならないのか?」

「っふ。そういうと思ってお前の為に用意したものがあるんだ。」

だったらもっと早く言ってくれ。

そういってC.C.は何かを取り出した。


手に持ったものを見てライは背中に嫌な汗をかいた。


「C.C.、それは・・・」

戸惑うライを見てC.C.は意地の悪い笑みを浮かべ首筋に顔を近づけた。

「こらっC.・・・あっ、ちょっと・・・」

ペロっと首筋をなめ、喉を鳴らしてC.C.言った。

「脱げ。」

「はぁ!?」

「まあ脱がなくても脱がすからな。」

恐ろしいことをずけずけ言ってC.C.は先ほどの言葉どおりライを脱がしにかかった。

C.C.はライの首を舐めたので、血程ではないが少し力を得た。

ライは暑さと空腹の所為で本来の半分も力が出ない上に首につけているものは吸血鬼
の力を抑えるものだ。


V.V.から身を守るためといわれて付けられたはずなのに、皮肉なことに今はマイナス
の効果を発揮していた。


















服というものは脱がすことは簡単に出来ても着させることは出来ない。




よってパンツ一枚で白いシーツを被ってなみだ目でC.C.を見上げているライにこの服
を着せるには何か別の方法を取らなければならない。



「別にスカートじゃなくて短パンだからいいだろう。」

「そういう問題じゃない!これ君が着てるやつじゃないか!!」

「よく見ろ上は確かに似ているが、下は黒の騎士団の女性団員服だろう?」

「どのみち、女物だろう!!というか何でどことなく露出が多いんだ!」

「細かいことにうるさい男だな・・・」

ライのきていた服は持っているからいいんだが、このままではシーツ一枚で過ごしそ
うだ。
まあそれはそれでいいが、折角ライの為に作った服だ。
なんとか着せたい。

(なんとかしなければ・・・)


そんな時C.C.の目に花瓶が写った。


「そうか!」

そういうとC.C.はその花瓶の花を取り、花瓶を持ってライの所まで来た。

そして勢いよく

「何をす・・・・」

花瓶の水をシーツの上から思いっきりかけた。



意外と大きい花瓶だ。


ほぼ全身まで水が伝い、肌にシーツがひっ付いている。

おかげで少し涼しくなった。


「これで着替える必要が出たな。」

そして呆然としているライからシーツを奪い取ると部屋の扉を開けた。


「私はこの前で待ったいるからな。

 はやく服を着ないと人を呼ぶからな。」

そしてライに一方的に言い、部屋をでた。




ライに選択肢は残っていなかった。








「入るぞ。」

10分後、C.C.は中の返事を待たずに入った。



「えっまだ心の準備が!」

「お前・・・」

C.C.の着ている、黒の騎士団のエンブレムが胸に大きく入った黒のノースリーブを腰
のところで小さくスリットを入れたものに、カレンや他の女性団員が着ている団員
服の丈の短いズボン。

C.C.のこだわりで生足はなるべく出さないようにと出る太ももが5センチ程度になる
ようにと紐のロングブーツの所為で絶対領域が出来ている。

だが、その白く長い腕はあえてなにも覆わなかった。


眼を大きく開いて口元を手で覆っているC.C.をみてライは慌てて声を掛けた。


「やっぱり似合わないだろう!?分かったなら早く服を」

「最高だ。」

「はぁ?」

あまりの突然の一言に口に出すつもりは無かったが、つい口から言葉が漏れた。

呆然としているライをおいて、C.C.は部屋をぐるりと見回した。

「私としていたことが・・・カメラを忘れた。
 とってくる。」



(『とってくる』?彼女の場合『取ってくる』というより『盗ってくる』
  なんだろうな)

とどうでもいいことをライは一瞬考えたが、すぐに冷静に戻った。


そして部屋にある大きな鏡(多分C.C.がこのために用意し・・・させたんだろう)
に移る自分を見つめた。


正直な感想は『まあまあ』だった。


多少露出は多いが、確かに夏服の機能を果たしていた。

もともとC.C.の着ていた上の服は重ね着できるように薄くなっていたので風通しが
良い。

長い丈を大幅にカットしたので、ジャマな部分も無い。

そして短パンはもともと男女兼用でもあっただけに、形として履きやすいようになっ
ている。

足を出すのが嫌だったが、ロングブーツのお陰で、出す面積は少ない。


そして何より軽い。

試しに空中を蹴ってみたら、軽さのお陰で前より動きが良くなった気がする。


威力に関しては、ブーツが以外にも底がしっかりしていて前のスニーカータイプより
かなりあがっていると思う。

ライは持ち前の反射神経でガードすることはあまり無いので余計な篭手はいらない。




そうしてこの服を堪能していると不意に廊下が騒がしくなった。






























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