消えた記憶 消えたあの人






それはカレンが倉庫に行った日のことだった。



「C.C.ー、ここにいるんでしょう?
 ゼロが探してたわよ。」


だが返事は無い。

団員の話ではここにいるはずだ。

しかたがないので奥まで行ってみる。


ここはブラックリベリオンの時よりも前のものがおいている場所だ。

こんな奥にまでカレンは来た事が無かった。


回りのものは埃を被っていてあれからだいぶ時間が経過したことがよく分かった。
広い倉庫の一番奥のほうまで来た。

(さすがにここまではこないか)
そう思って何の気なく倉庫を見回したらある所で目が留まった。

「・・・?」

何か大きなものがシートをかぶせられている。

それだけなら周りのものと大して変わらないが、その周りだけ埃がない。

どうやらここにしょっちゅう誰かが来ているみたいだ。


それに、この大きさは見覚えがある。


これは藤堂や四聖剣が乗っている月下と同じ大きさだ。



興味本位にそのシートに手をかけた。



「誰だ」
「わっ」
カレンは慌ててそのシートから手をはなした。

後ろから突然声がして振り返るとそこいたのはC.C.だった。


「なんだ、お前か」

そういってC.C.はゆっくり近づいてきた。


「『お前か』ってねぇ・・・ところでC.C.これは?」


そう言うとC・Cはカレンの隣に立ち『それ』を見上げた。

「やはりお前も覚えていないか・・・」

C.C.はちらりと横目でカレンをみる。


「なんのこと?」
そういうとC.C.は下を向いてぼそっとつぶやく。

「やはりギアスは強力だな」

「『ぎあす』?」

「気にするな、ただの独り言だ」

そして再び『それ』を見上げた。

「これが、気になるか?」

どうやらここに来ていたのはC.C.のようだ。
このごたごたとした倉庫を慣れた足つきですいすい進んでいく様子で分かった。
「・・・気にならないほうがおかしいと思うけど」

基本的に無関心でピザばかり、というかピザしか食べていないC.C.がこれだけ
絡んでくるのは珍しい。


「このシート取っちゃいけないの?」

そういうとC.C.は静にカレンを見た。

「別にかまわない。
 だが責任はとらないぞ?」

「どういう意味?」

「これは・・・お前が、いやお前たちが失くしたあるものと非常に関係が深い。

 その忘れたものはお前にとってかけがいのないものだったかも知れないし、

 とても大切なものかもしれない」

「なら、別に・・・」

「だがそれはとても悲しいものかもしれない。

 思い出したときにはもう手遅れかもしれない。

 苦しくて、悲しくてつらいものかもしれないぞ。」



そしてC.C.は再びそれを見上げた。


カレンは最近違和感を感じていた。

いや、最近と言うよりブラックリベリオンの時からかもしれない。

たくさんの仲間や日本人が死んだブラックリベリオン。


黒の騎士団のエースと言われる人物は自分ひとりだったかー。

紅蓮の隣にはこんなに空間があったかー。

あの事件のときカレンは何か大切なものを落としてきた気がする。


それは、とても悲しく、とても暖かく、とても冷たく、そしてとても・・・


「・・・私は日本を取り戻すために色々失ったし、色々捨ててきた。

 覚悟は出来ている。」


そういってC.C.を見た。

彼女は薄く笑った。

「・・・ならいいだろう。」



そうしてC.C.はシートをとった。




一番最初に目に入ったのは蒼。



この蒼はあの人によく似ている。



銀髪の髪のあの人に。



それは蒼い月下だった。

これは・・・確か神楽耶が  の為にわざわざ作らせたものだ。


そしてこの左手の輻射波動は・・・

「こ・・で・・・レンと、・・一緒・・・だ、・・・ね・・」


そういって笑う『誰か』の笑顔はぼやけていて、表情も目も全く思い出せなかった

だけどそれは


とっても暖かいものだった気がする。


とっても綺麗なものだった気がする。


とても儚げだった気がする。



そして・・・



未だ蒼い月下から一時も視線を外さないカレンをみてC.C.はゆっくり口を開いた。


「なにか思い出したか?」











カレンの目から涙が一粒あふれた。


「・・・  、・・・」

カレンの声に出ていない音をみてC.C.は満足げに笑った。







そして、それはとても愛しいものだった。